「マイナス金利「税」で凍りつく日本経済」[読書]
金融本というのを始めて読んだのですが、言い回しが強烈な本でした。
もし、金融本始めて読むから何かオススメないかと聞かれたら、
他のもっと当たり障りのない言葉遣いをしている本にしようとも思いました笑
第1版が2016年の4月30日。
紙ベースの書籍で、しかもハードカバーで作られたものにもかかわらず、
最新の情勢を盛り込むためにスピード感を意識して発行されたことを感じます。
著者が言論を続けるのは、経済情勢をより詳しく解説し、次に起こることをその都度予測(予言)することが目的だということで、
今回の本に書かれていた解説と予測の中から気になった部分をメモします。
- 去年の夏と今年初めの暴落は米とサウジ・中の殴り合い
- GPIFの損益がはっきりしない
- 金融崩れはユーロから
- 金を買うべき
- マイナス金利は国債の暴落を防ぐことだけが目的
- 中国の猛進
- 米大統領戦はヒラリー・クリントンが勝つ
日本経済新聞やロイターからの引用記事を多用して解説をしようとするところはしっかり解説してくれています。引用記事がどこまでか少し分かりにくい部分もありました。
円高の構造がどうなっているのかということに対して、
米経済の減速からくる、利上げ観測の後退によるドル安と、
原油安、中国経済懸念、欧州銀行不安など多くのリスクから、
安全資産とされている日本国債を買う動きが強まっていること。
GPIFが運用している資金の損益について、
株価の下落によるGPIFの数兆円の損失が新聞などで指摘された時、
政府は平成13年からの15年間の間に累積で50兆円の利益が出ているという説明をする。
しかし、その間にどれくらいの損失が出ているのかということは、
決算をしていないからわからないじゃないか。という指摘に関してはすごく同意。
でもあまりにも断定的で言い回しが強烈なので、主張をゴリ押ししたいがために恣意的な説明がされていないとは言い切れないなと思ってしまいます。
いかな勉強中とはいっても自分のような素人にとってみると
その内容が正しいのかどうか判断がつきにくく、書かれていることを鵜呑みにするのは良くないなとは思いました。
後半の第6章では中国の猛進が説明されています。
AIIBの発足で欧州勢がこぞって参加したことや、
中国の人民元が有事に通貨を相互融通できるSDRに組み入れられること、
ドルを国際的に決済するシステムに対抗して、元を国際的に決済するシステムを中国が作ったことなど、
様々な話を取り上げて中国の国際的なパワーバランスの中での躍進を説明しています。
一言で言えば「米国の覇権が終わる。」ということなんだと思いますが、
中国があまりにも強く書かれすぎていて、そんなに中国がうまくいくのかと疑問も感じます。
一番力を入れて書かれていたのが、タイトルにもあるようにマイナス金利の話でした。
経済回復を望んでいるということはもうなく、国債の暴落と信用の低下を防ぐために
ひたすらに金融緩和を継続し、国債の利払いの額を減らすことが目的だろうという話でした。これは確かにその通りだなと思います。
すでに1000兆円まで膨らんでいる国債は、利払いだけでも相当な金額になる。
これまで金融緩和をし続けてきたおかげで国債価格は跳ね上がり、国債バブルの状態になっているが、
日銀の資金がなくなった時、緩和を止めざるを得なくなる。
その時、国債価格は上昇を止めて下落し始める。
国債の下落が始まると日本国債に対する信用も失われて下落スピードが加速。
同時に金利も急激に上昇して国債の利払いが上昇。財政やばい。
みたいな流れになっていきそうです。
業界の有名人が書いた本だとのことで紹介されたので飛びついたのですが、
この本を一言でまとめると、「マイナス金利をこきおろす本」という印象です。
主張が強すぎて解説が本当に正しいのか正しくないのか信じていいのかわからないような気にもなりますが、こういう話もあるよということで読むのが良いのかなと思いました。