人工知能は人間を超えるか[読書]
一冊本を読んだので概要と感想を書きます。
今回読んだのはこの本です。
少し内容をまとめつつ、思ったことを書いていきます。
人工知能がもてはやされている今
人工知能がもてはやされいます。
自立して掃除をするルンバや、自動運転に搭載されるシステム、
ありとあらゆるところで人工知能を利用した技術が進展しています。
そもそも人工知能の目的とは、人間の脳を人工知能で置き換えることができるはずだという考えに端を発しているそうです。
人間の脳は、電気信号が神経を通じて流れている。
その仕組みは電気回路で再現可能であり、つまりそれは機械によって人間の脳を再現することができるという部分につながります。
ちょっと恐ろしいなと思わなくもない発想ですが、なぜ研究されているのかという、そもそもの動機の部分を知るのは大事だなとも思ったのでした。
人工知能の3度目の春
実は人工知能のブームは今に始まったことではなく、
過去に2回、ブームが起こっています。
しかしブームは新たな問題によって沈静化し、
人工知能を研究する学者にとって辛い時間を過ごしていたようです。
1回目
一回目の人工知能ブームは決められたルールの中で
決められた目標を達成することができるだけでした。
近年の将棋界を見てみると、プロの棋士と将棋ソフトの対戦が話題になっています。
今では、将棋ソフトがプロ棋士に勝つことが珍しいことことではなくなり、
人工知能が人間を上回るという強烈なインパクトを与えることになります。
しかし、それだけでは不十分だった。
現実の問題には対処できないからです。
この時点での人工知能の能力では、病気を患っているある人を治療するためには、
何をする必要があるのか?
それを判断することはできなかったことに問題がありました。
2回目
1回目のブームでは、解決できなかった問題を解くために、
膨大な知識を事前に人工知能に教え込むことで解決することができました。
病院に存在するカルテや治療記録など、世界中の病院に記録されているデータを人工知能に取り込ませる。
診察時にどのような病状かを聞くことで、データの中に当てはまる症状を検索して病気を判断し、さらに医療記録の中から適切な治療法を探る。
これは治療ロボットですが、このように必要な知識を記憶させ、
専門性をもたせた人工知能によって1回目の問題をクリアすることができました。
しかし人工知能に記憶させるべき、必要な知識はどうやって判別するのか?
治療ロボットを作るには、医療に関するデータを記憶させなければならないのい、
世の中には医療に関するもの以外にも多様で莫大な情報が存在しています。
機械自身がそれらの中から、医療に必要なデータは何かと判別しようとすると、
ありとあらゆる情報を医療に必要か、必要でないか、判断をしてしまいます。
すると永遠にその判断の作業が続いてしまい、
全く動かなくなるという問題がありました。
何が必要で何が必要でないのかという判断をするには、
まだ人間が考える必要があったのです。
3回目
3回目でその問題が解決できる兆しが見えてきました。
グーグルの画像認識技術が代表的で、
蓄積されたデータの中から得られる「特徴」を発見するという
「特徴表現学習」が重要な役割を持っています。
しかしその「特徴」を発見するのが難しく、できたとしてもその「特徴」からでは
人間が認識しているものと別の認識をしたりと、うまくいかないことも多かった。
その「特徴表現学習」をいかに正しくさせるかという部分で
「ディープラーニング」が注目されているようです。
人工知能は人間を超えるか
機械が人間を危害を加えるターミネーターのような未来は本当にやってくるのか?
SF作品でよく題材にされている問題です。
6章の内容ですが、表題にもされている内容でもあります。
「シンギュラリティ」という言葉があるそうです。
人間が人間より知能の優れた知能を作り出すことができたとしたら、
その知能はさらに自分より優れた知能を作り出せるということになる。
その繰り返しが起こることによって、人間では到底理解できないようなことを考える知能によって人間が支配されてしまうというものです。
シンギュラリティは2045年にやってくるという主張もあり、
本当に起こったらやばそうだということで、そのことを危惧する人々も多い。
本当にそんな時代がやってくるのか?
これまでの人工知能の研究の流れを知り、
さらにこの先の発展の端緒となる「ディープラーニング」について読んでみると
ありえないことではないと思ってしまいます。
ここで筆者は、この表題の問いについて答えを出します。
研究を推し進める立場でありながら、
表題の問いに対する答えが想像していた答えとは違っていました。
そのことが意外だったのですが、
ここに筆者が言う人工知能への期待と限界の違いがあり、
そのギャップを埋めるためのこの本が作られたんだなと気付かされます。
読んでよかったなと思える部分でした。
読んでみての感想
人工知能を専門にしている科学者の視点から語られている本であり、
人工知能の現状を正確に伝え、正しい理解を広めることを目的として出版されています。
10年から20年後には約半分の職業がなくなるという信じられないような話もある中で、人生に大きな影響を及ぼすかもしれない人工知能について知っておくのは良いことだと思います。
筆者は人工知能を盲目的に推しているのではなく、現状と問題点をしっかりと
指摘した上で人工知能の発展を願い、またその実現の可能性を考えています。
人工知能については全く知らないけど、今よりもさらに情報技術が発達しているであろう未来について考えさせられる本でした。
途中に専門的で難しい部分もありますが、文中で筆者が言うように、
難しい部分は読み飛ばして雰囲気をつかめれば良いと思います。
3章までは人工知能のこれまでのことが書かれてあり、
4章からはこれからのことが主題となっています。
この4章からが大事なところで、ここはしっかり読んでおくべきだと思いました。
情報技術によって仕事が効率化されていく中で、
コンピュータは数字や記録に残るものの分野を得意としています。
それ以外の分野で自分はできることがあるのか?
というか数十年後になっても、機械に仕事を奪われないためには?
というのを考えながら働くべきなのかも。